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ある猫の思い出

まだ実家が引っ越す前は、JRの線路がすぐ側にある小さな家に住んでいた。父の稼ぎから考えて借家が当然という時に、なぜかなけなしの金をはたいて土地を買っていたため、オンボロながらも持ち家だった。そして、南側には小さいながらも庭があった。

猫を飼うようになった家には、何故か野良猫も寄ってくるらしい。キジトラの雌を隣家から貰い受けて飼い始めると、何処からとも無く2歳ぐらいの雄が毎日餌をねだりに来た。
庭のバケツに溜まった雨水を飲み、物置小屋の前に置いたダンボールに勝手に入って夜露をしのいでいたらしい。

暫くしたら、その猫と一緒にもう一匹猫が寝ていたと母が言う。しかも、なにやらシッポがボロボロのように見えたとも。
「もし本当なら病院に連れて行かなきゃ駄目じゃない、なんで朝見かけたのに今ごろ言うの!」
学校から帰ってからこの話を聞いた私は、母を怒鳴りつけた。
急いでダンボールのところへ行ってみると、まだ3ヶ月ぐらいの仔猫が小さく丸まって寝ていた。

後ろ足がちぎれてなくなっており、シッポも半分ぐらいで切れている。
恐らくは線路で電車に轢かれたのだろう。
家の前の線路は、頻繁にではないが、外飼いの猫、野良猫、野良犬、飼い犬までもが、線路で真っ二つになったのを目撃するような場所なのだ。
それどころか、かなりの急カーブな為に運転手のブレーキも間に合わないと知って、わざわざ自殺をしにくる人がいる様な土地だった。

その時はもう夜だったし、傷から出血していないようなので、翌日医者で治療してもらった。

傷が癒えるまでという約束で家にも入れた。彼は(この猫も雄だった)野良育ちなのに、テーブルの刺身にも手を出さないほどのおっとりとした猫で、今回保護されなかったら大人になる前に飢え死にしていたかもしれないと思った。

結局、シッポは上手く治ったが、後ろ足はどうしても地面に突いて歩くために、何度治療してもらっても骨が出てきてしまい、かわいそうでならなかった。

やがて、新入り君はどこかへ消えるようにいなくなってしまった。
ダンボールが窮屈になっても、お兄ちゃんと一緒に寝ていたっけ。

野良猫の雄は仔猫をハンティングする事があるらしいが、この猫は違ったのだ。
まだ熱々のご飯でもむさぼりつくと言う特技も持っていたお兄ちゃん。

動物と暮らしてみなけりゃ、こんな経験はできない。

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