ハッチ大王が崩御して丸2年経った。
初対面で、なんとなく気になる存在だと思って、面倒を見ていた人にどういう猫なのかを聞いたのだった。
じっと電気ストーブの前に佇む姿は、ただの寒がりジジイのようでもあり、修行僧が瞑想しているようにも見えた。
話を聞いてみて、目を開けないのは、目が見えないからだと判った。
何が原因かはわからないが、萎縮して引っ込んだ目は真っ白に濁っていた。
若い機敏な猫に餌を取られてしまうからか、体が骨と皮だけになっていた。
そんな状態なのに、彼は外で暮らしているのだとも聞いた。
帰り際、私と共に外にでた彼は、名前を呼ぶと振り向いて一声鳴いた。
そして、まるで目が見えているかのように、飄々と夕刻の町の風景の中に消えていった。
2月、まだ真冬だ。家路を急ぐ中、ただただ彼が気になった。
暖かい家の中でたっぷりとご飯を食べさせたい。
しかし、もうすぐ1歳になる猫を3匹もかかえていて、更に彼を迎えるなど、できるはずもないし、してはいけないと考えた。
一時預かりをしてくれる人が見つかったので、早速里親さんを探すことにした。
しかし、預かってもらってすぐに、彼が慢性腎不全ではないかといわれた。
毎日大量の尿をするのはきっと病気だからだと。
預かってくれている方のかつての飼い犬も多尿に気づいて診察を受け、同じ病と言われたというのだ。
急いで病院に連れて行ってもらったが、末期だという。
それを聞いた私の答えはひとつ。
彼を引き取り、介護をする事。
それは、彼に里親が見つからなかった場合、自分が引き取るという覚悟でいたということもあるが、もうひとつ理由があった。
彼が気になったのが、哀れみでもなんでもなく、私のひと目惚れだったのだと気づいたのだ。
彼がわが王国の大王に即位してからは、一分一秒が大切だった。
米を研ぐわずかな時間が惜しくて、無洗米を使うようになった。
おかずを用意する間、台所に立つと大王が見えない。惣菜屋に通った。
湯船につかるなんて、とんでもない。シャワーばかりの毎日になった。
仕事に行っている間、心配で仕方がない。監視カメラを付けて、携帯電話で30分ごとにチェックした。
そして夜は寄り添って眠った。
彼は恋人であり、父であり、兄であり、わが子でもあった。
彼が死んだ夜、自分の親の時だってこんなには悲しまないだろうと言うぐらい、泣いて泣いてすごした。
さあ、今夜もエビフライで乾杯しようか。
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Comment:7
- なつめ2006-04-18 (Tue) 16:56
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こんにちは。
ハッチ大王が旅立たれてからもう丸二年もたつんですね。
時は、すぎてしまうと流れるのが本当にはやく感じます。人と人だけじゃなくて、他の生き物やひいてはいろいろな物であっても、ひと目みてひかれてしまう・・・っていうことがありますね。
生きている間にそういう人や生き物や物にどのくらいたくさんであえることがその人の幸せの度合いなのかなとぁと最近思います。
- ばあや2006-04-20 (Thu) 12:46
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あー、エビフライ買って行ってからもうそんなに経ちましたか。
最後の日々はお互いに蜜月だったんですね。最後の日々と言うのがなんとも切ないけれども、いい時間だったんだなあ。
もっと書こうと思ったけど照れくさいので止めます。今度エビフライ持って訪ねて行くよ。
- ばあや2006-04-20 (Thu) 12:48
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あ、3にゃんの誕生日、だいぶ過ぎちゃったけど、おめでとう!とお伝えください。
- モーリス2006-04-21 (Fri) 21:07
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もう、2年になるのですね。
窓辺で日向ぼっこしているハッチ国王の、うしろ姿は、今も心に焼きついております。
故ゴロ爺と合ってくれているのだろうか。
- 神渡 りり
2006-04-25 (Tue) 13:18 -
みなさん、ありがとうございます。
現在、ちょっと仕事が立て込んでますゆえ、ちゃんとしたお返事は後日改めてゆっくりとさせていただきとうございます。
ぺこ
- ねこまた2006-05-02 (Tue) 23:54
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ついこの間のことのような気がするのに
もう2年・・・。うまくコメントできません。
でも私もエビフライを見るたびにハッチ大王を
思ってます。
ハッチ大王万歳!
- 神渡 りり
2006-05-07 (Sun) 23:36 -
なつめさん、ばあや、モーリスさん、ねこまたさん
ありがとうございます。今日、実家の庭にハッチのお骨の一部を埋めてきました。
まだ、心のどこか隅のほうに小さな小さな風穴が開いていて、時々隙間風が吹いてくるときがありますが、ハッチの思い出は良いもののほうが多くなりつつあります。
どうせ大王はアッチの世界で酒池肉林の日々を送っているに違いないので、私が心配することはないんですけどね(笑)
後から行った猫さんに迷惑かけてないか、それがちと心配かも(^^;

